2015.6.7 07:30
軽快に走るトヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」【拡大】
トヨタ自動車が昨年12月に発売した「ミライ」は、世界で初めて市販された量産型の燃料電池車(FCV)だ。水素エネルギーを用いて走行中に水しか排出しないため「究極のエコカー」とも呼ばれているが、実際の走りや使い勝手はどうなのか。公道を自由に走らせる機会があったので、その様子をレポートする。(文・大竹信生 カメラ・津田克仁)
ミライは水素と酸素を化学反応させて作った電気を動力源とし、最高出力113kW(154ps)のモーターを回して走る前輪駆動車。車両価格は723万6000円(税込み)で、国から202万円の購入補助金が出る。発売から1カ月で約1500台を受注するなど、次世代エコカーとして何かと話題のクルマだ。せっかくのチャンスなので、東京から千葉の幕張まで走らせてみた。
まずは水素ステーションで、スタッフが水素を充填する様子を見させてもらった。基本的にガソリン車の給油作業と変わらないが、充填中は「プシュー」といった音が聞こえた。水素自体は無色無臭の気体なので、ガソリンスタンドのような独特なニオイはなかった。
素直なレスポンス、滑らかな走り
さて、いよいよ試乗だ。運転席に座ってスタートボタンを押すと、パワーが入ったことに気がつかないくらい静かに起動した。シフトレバーをドライブモードに入れてアクセルを踏むと、ほぼ無音でスーッと発進。動き出しは一言で表すと「滑らか」だ。初めてFCVを運転する期待と緊張感に包まれて、首都高から千葉方面を目指した。
ミライの特徴のひとつは、速度を上げても静粛性が高いこと。アクセルを踏み込むとエアーコンプレッサーが空気を吸引する「ヒーン」といった高い音が鳴るが、これがなければクルマが動いていることすら忘れてしまいそうだ。ただ、あまりに静かなので、バンプが目立つ路面ではロードノイズを拾いやすい印象を受けた。
アクセルを踏んだときのレスポンスは素直で、もたつく感じは全くない。中低速で街中を走るぶんには、不満を感じるドライバーは少ないはずだ。やや物足りなかったのは、アクセルを一気に踏み込んだときの加速力。60キロくらいまでは余裕があるが、その先の伸びをあまり感じなかった。