2016.2.7 00:00
創業134年のシカゴ証券取引所。有数の老舗取引所だが、中国の投資会社「重慶財信企業集団」に買収されることになった=5日、米イリノイ州シカゴ(AP)【拡大】
中国資本の世界進出が止まらない。米シカゴ証券取引所は5日、中国の投資会社「重慶財信企業集団」による買収に合意したと発表した。買収金額は非公表。これまでにも中国資本は、全世界の国境を越えて各種企業の買収を行ってきたが、米国の証券取引所を買収するのは初めて。重慶財信は中国企業の株を米国で流通させることなどを目的に挙げている。シカゴ証取のノウハウは、中国本国での遅れた金融取引のあり方を国際水準並みに押し上げることに寄与すると期待されているが、自由経済の象徴ともいうべき証券取引所の買収に「ついにここまで来たか」と嘆息の声も上がっている。
■ニッチで存在感の老舗
シカゴ証取は1882年3月に創業された老舗取引所。先物取引で有名なシカゴ・マーカンタイル取引所とは別の組織で、22兆ドル(約2570兆円)の規模がある米証券取引に占めるシェアも約0.5%と小さいが、上場基準が緩く、ニューヨーク証取やナスダックで資金調達が困難な企業をターゲットにしたニッチ(隙間)ビジネスで存在感を示してきた。
しかし、取引所間の競争が激化し、大量の売買注文を短時間に素早く処理するシステムを備えているかどうかがポイントとなる中、巨額のシステム開発費を捻出できる戦略的な投資パートナーを募っていた。
米メディアによると、シカゴ証取のジョン・ケリン最高経営責任者(CEO)は声明で「重慶財信の傘下に入ることは、われわれの戦略と合致する。今春導入予定のオークション方式の株式取引システムなどに必要な資金の獲得も可能になる」とコメントした。米証券取引委員会(SEC)の承認を経て今年後半に買収が完了する見通しで、買収後も現在の経営陣は続投するという。
■「重慶に新たな取引所を」
重慶財信は1990年代に国有資産の民営化プロセスの中で創業され、当初は中国中央政府の直轄市である重慶市の不動産開発事業にかかわっていたが、その後、金融業界にも投資を広げた。盧生挙会長は声明で「買収によって中国企業の米国での上場を後押しするとともに、シカゴ証取のノウハウを中国の金融取引に活用し、将来、重慶に新たな証券取引所を開設することを検討している」と述べた。
建前上は依然として「共産主義国家」である中国の金融、証券取引は、世界水準から大きく遅れ、よちよち歩きの状態だ。今年の年初、上海証取で株価が急落すると、導入直後のサーキットブレーカーが自動発動して取引が中止された。これでかえって混乱すると、中国当局はサーキットブレーカー制度を取りやめた。
中国市場の株価は事ほど左様に不安定で実体経済を反映しておらず、経済の先行指標にもなっていない。中国経済を読み解くのが困難なのは、世界経済にとってもマイナス要因になっており、今回のシカゴ証取買収は「中国金融の国際水準化に向けた一歩前進」(米経済ニュースサイト・ビジネスインサイダー)との見方もある。ついに…とセンチメンタルに浸っている場合でもなさそうだ。