英大手襲ったサイバーテロ　４００万人分情報流出…露イスラム過激派犯行か

　英国のブロードバンド（高速大容量）通信大手「トーク・トーク」は２３日、サイバー攻撃を受け、顧客４００万人以上の個人情報が流出したことを明らかにした。トーク・トークには犯人を名乗る人物から金銭を要求する電子メールが届いているという。

　また、英ＢＢＣ放送はサイバー犯罪対策の専門家の話として、ロシアのイスラム過激派グループがインターネット上に犯行声明を出したと報じた。従来の類似犯罪ではあまり前例がない攻撃対象への金銭要求、イスラム過激派の犯行声明といった展開に、関係者は当惑の度を深めており、ロンドン警視庁（スコットランドヤード）は慎重に捜査を進めている。

　■「金銭要求の接触」

　トーク・トークによると、サイバー攻撃があったのは２１日で、この１年で大規模攻撃を受けたのは３回目だという。流出した情報には、顧客の名前と住所、生年月日、電子メールアドレス、電話番号のほかに、クレジットカードや銀行口座の情報も含まれている。現在の顧客だけでなく、契約を解除した過去の顧客情報も一部が流出したとみられている。

　英国を代表する女性経営者の一人であるトーク・トークの最高経営責任者（ＣＥＯ）、ディド・ハーディング氏（４７）は英メディアに、「個人情報の防御が甘く、顧客に迷惑をかけて申し訳ない。ただ、（この犯行には）いろんな要素がありすぎて、私には責任を持って話せることが今はあまりない。金銭を要求する接触があったことは確かだが、本当に犯人なのかは確認が取れていない。また、個人の犯行かグループによるものなのかも分からず、トーク・トークが狙われた理由も不明だ」などと語った。

　サイバー攻撃が明らかになり、トーク・トークの株価は２３日、２０１３年８月以来の最安値を付けた。

　■ネットで売り出し

　また、ロイター通信によると、既にトーク・トークの顧客のものとみられる個人情報がインターネット上で売りに出されているのを専門家が確認したという。売りに出されたのは、「ダークウェブ」と呼ばれる、検索エンジンの通常の検索ではひっかからない情報サイト上で、ダークウェブは専ら、犯罪や素性を知られたら困る活動に利用されているのが実情だ。

　一方、ロンドン警視庁の元サイバー犯罪捜査官のアドリアン・カリー氏はＢＢＣに「露イスラム過激派グループが、玄人筋のサイトに犯行声明を出した」と語った。これまでにイスラム過激派が、サイバー犯罪の前面に出てきた例はあまりなく、関係者も注目している。

　英国の企業経営者らは、今回の犯行に少なからず衝撃を受けている。また、ロンドン警視庁は、国家や安全保障が絡む犯罪ではないとの見方をしている。

　世界中では毎日約２０００件のサイバー攻撃が確認され、今や、その防御ビジネスは世界で「年３０００億ポンド（約５６兆円）」（ＢＢＣ）にも達している。

　今回の攻撃は、犯罪シーンが新たな局面に入ったことを予感させる。