《ますます醜悪になった》
5月30日付英紙ミラーに躍った大見出しは、中国の軍事膨張や侵略的蛮行を鋭く衝いていた。習近平・国家主席(62)の掲載写真も鉄面皮の悪相だった。ところがよく見ると御髪が…。
汚職スキャンダルに大揺れするFIFA(国際サッカー連盟)に君臨するゼップ・ブラッター会長(79)の5選決定(4日後に辞意表明)を受けた責任追及記事と取り違えていた。確かに、中国とFIFAは賄賂と派閥の跋扈に始まり不透明な決定プロセスに至る共通の闇文化を有す。
ただ、「恥知らずな」幹部を抱えるFIFAには再建が期待されるが、建国100年=2049年までの中華帝国復興をなりふり構わず強引に進める中国には「恥という言葉」すらないが故に、自滅への期待がかかる。
シンガポールで5月末に開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)でも、中国人民解放軍副参謀総長の孫建国・海軍上(大)将(63)が《ますます醜悪になった》中国の南シナ海覇権に異を唱えるベトナムやフィリピンを「小国は挑発的行動を採るべきではない」と侮辱した。
反り返った態度が巨大な反作用を誘発し、自滅へと突き進む愚かを、安全保障論上は《勝利による敗北》と呼ぶ。