2011年5月、米海軍特殊部隊「シールズ」が国際テロ組織アルカーイダの最高指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者=当時(54)=をパキスタンで殺害した作戦に関し、米オバマ政権が事実を歪曲(わいきょく)したとの告発記事が10日、公表された。筆者は米を代表する調査報道記者、シーモア・ハーシュ氏(78)。殺害作戦は米軍の全面主導ではなく、パキスタンの軍と諜報機関(ISI)が多くの部分をお膳立てしたもので、ビンラーディン容疑者も2006年から殺害場所となったパキスタン北部の邸宅で軟禁下にあり、銃撃戦もなく、遺体はアフガニスタンの山に捨てられたという。衝撃の告発記事に世界がざわめいている。
06年に身柄確保、軟禁
ハーシュ氏の告発記事は10日、隔週刊のイギリスの書評誌「ロンドン・レビュー・オブ・ブックス」(電子版)に掲載された。米シカゴ出身のハーシュ氏はベトナム戦争中の1968年に起きた米軍による「ソンミ村虐殺事件」や、イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待事件(2004年)などのスクープで知られ、米報道界最高の栄誉ピュリツァー賞も受賞している。
そのハーシュ氏による今回の告発記事は、米の諜報機関の匿名上級職員や、米特殊作戦軍のベテランコンサルタント2人、パキスタン側の関係者の情報を基に執筆されている。