組織的な銃器犯罪などに限定された通信傍受が、詐欺の捜査でも解禁される見通しとなった。事件関係者の通話内容をリアルタイムで監視する通信傍受は、裁判所の令状に基づくとはいえ、詳細は明かされない捜査当局の「隠し技」。深刻な被害が後を絶たない特殊詐欺対策の切り札と期待される半面、“盗聴”の拡大には根強い懸念があり、運用にも課題が残されている。
一網打尽を狙う
「今日から通信傍受に協力願います」。首都圏の携帯電話会社に捜査員が現れ、令状を示した。社員の立ち会いで連日、午前10時から午後7時まで、捜査員はレシーバーを耳に当て、暴力団組員の会話を拾い続けた。
通信傍受法で電話やメールの盗聴が認められた犯罪は、銃器犯罪や組織的殺人など4種類。暴力団「工藤会」の組織的殺人未遂事件でも、トップの関与追及の陰で威力を発揮したとされる。
大阪地検特捜部の不祥事を機に、捜査手法の改革を検討してきた法制審議会は昨年、取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けなどとセットで傍受対象の拡大を決定。新たに追加される窃盗や強盗などの中で、最も当局の期待を集めたのが詐欺対策だった。