【アートクルーズ】
マンガ家のしりあがり寿が毎年、京橋にある小さな画廊で個展を開く美術家でもあることを、どれくらいの人が知っているだろう。案外、知られているのかもしれない。しかし職業柄、私などには美術家としてのしりあがり寿のほうが、マンガ家としての彼よりも、はるかに馴染み深い存在となっている。
私はこの恒例の展覧会を、いつもハガキのダイレクトメールで知る。マンガ界の巨匠だからといって、立派なものではない。美大を出たばかりの画家の卵が初めて出す個展の案内と、なんのちがいもない。でも、そこがおもしろい。
それにしてもお堅いタイトルだ。なにしろ「絵画の存在とその展開について」と来た。宛名を裏返すと、マチスを思わせる室内の壺が描かれている。凡庸だ。具体的なコメントはいっさいない。これではわけがわからないので、作家自身のホームページを当たってみた。すると、そこにはこう書いてあった-「毎年恒例となった京橋ASK? での今回の個展は『絵画の存在とその展開について』というカタイ題名がつけられました。その意図とは……? その真意を確かめに、是非お越しいただければ幸いです」と。