2013年11月8日、台風30号(英語名ハイエン)がフィリピンを襲った。最大瞬間風速100メートル超という、観測史上まれに見るこの超大型台風により、レイテ島やサマール島などフィリピン中部の島々で猛烈な暴風と高潮が発生、死者6200人以上、行方不明者1700人以上の甚大な被害をもたらした。
当時、東京にあるワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)事務所も騒然としていた。WVJが台風発生以前から支援活動を実施している2つの地域がレイテ島とサマール島にあり、台風の直撃を受けたからだ。
両地域ともフィリピン国内でも貧困度が高く、低い就学率、高い乳幼児死亡率・妊産婦死亡率など、多くの課題を抱えていた。支援地域では住民や行政機関と協力しながら、教育や経済開発、保健衛生などに取り組んでいた。活動開始から1~2年が経ち、少しずつ活動の成果が見えてきた矢先の出来事だった。
台風の直撃後、被災地のライフラインは寸断され、現地スタッフとも連絡がとれず、情報が錯綜(さくそう)した。一方、日本の支援者からは問い合わせが相次ぎ、祈るような思いで情報収集にあたる日々が続いた。