2014.5.12 11:05
【青信号で今週も】
独立行政法人理化学研究所は「成体の脳を透明化し、1細胞解像度で観察する新技術を開発」(2014年4月18日)と発表しました。生物にもともと存在する尿素に脳を浸して透明にするという偶然の発見、セレンディピティから研究が進んだとのことです。
セレンディピティ(serendipity)とは、『セレンディップの3人の王子』という童話にちなんだものです。セレンディップは現在のスリランカ。王から旅を命じられた3人の王子たちは、ペルシアでラクダに逃げられた男に出会います。王子たちは、ラクダの特徴だけでなく運んでいた荷物の内容までことごとく言い当てたため、泥棒としてとらえられてしまいます。けれども、無罪が判明し、めでたしめでたしというお話です。
王子たちはなぜ、「見たこともない逃げたラクダの特徴を知っていたのか」というのがお話の面白いところです。道の片側しか草が食べられていなくて、歩いた道にアリがたくさんいた…などの情報から、ラクダは片目しか見えず、ハチミツやバターを積んでいたことを見抜いたという種明かしです。こういった情報は、どの人も見ていたはずでした。注意深い観察眼をもった王子たちだけは、目の前の風景に意味を持つことができました。今回の脳を透明にする技術も、研究者たちの注意深い観察のおかげです。