蚊が媒介する熱帯の感染症とされてきたデング熱が世界的な広がりを見せている。地球温暖化の影響で、ウイルスを媒介する蚊の分布が北上、東南アジアや中南米だけでなく欧州諸国でも感染例が出始めた。世界保健機関(WHO)は「世界の人口の40%以上に感染のリスクがある」と警告、感染拡大防止に向け警戒強化に乗り出した。
日本で感染の疑いも
WHOによると、デング熱の感染報告例は1960年代に年間1万6000件程度だったが、2011年には200万件以上に増大。1960年代には深刻な感染がみられた国はフィリピンやインドなど9カ国のみだったが、現在は100カ国以上に増え、デング熱に感染する恐れがある人口は世界全体で25億人に上る。デング熱はマラリアや日本脳炎など蚊が媒介する病気の中で最も急速に広がっているとされる。
デング熱は、本来は温暖な地域に生息するネッタイシマカやヒトスジシマカがウイルスを媒介、感染から3~7日後に突然発熱する。出血など重い症状に陥り、死に至ることもある。欧州では2010年、フランスとクロアチアで感染例が報告されたほか、12年にポルトガルのマデイラ島でも発生。ネッタイシマカは既に欧州の20カ国以上で見つかっているという。