今でこそ鉄道ファンは市民権を得ているが、私が子供の頃は「鉄子」などという言葉はなく、鉄道が好きな女性というのは社会的にほとんど認知されていなかったと思う。
小学生の頃、私は目蒲線(現在の目黒線)で通学していた。濃い緑色の車両はわずか3両。あるとき、新車両の導入に伴い、緑色の車両が廃止されるという発表を駅のポスターで見た。
毎日お世話になっていたのに、もう乗れなくなってしまうなんて。いてもたってもいられず、手紙を書いて駅員に渡した。詳しくは覚えていないが、嫌なことがあっても毎日変わらず走ってくれた車両に子供ながらお礼を言いたかったのだろう。駅員が、驚きながらも「ありがとう」と受けとってくれたのをぼんやりと覚えている。
数カ月後、自宅に1通の手紙が届いた。開けてみると、そこにはあの懐かしい緑色の車両の写真。だが、撮影場所は知らない場所だ。地方の路線でさらに車両を短くして(1両だった)、あの緑の電車はまだ走っていたのだ。