【本の話をしよう】
あなたの欲しい本は、既に目の前にあるのかもしれない。先日、あるワークショップをしたのだが、その現場で実感したことをちょっと書き留めておきたい。
本屋や図書館を訪れたときに、あなたはいつもこう思っているに違いない。「こんなにもたくさんの、多種多様の、似たような本の山の中から、いったい全体どの本を手に取れというのだ」。たしかに、わかる。本に関わる仕事をしているような僕であっても、近所の大型書店を訪れたときは「こんな本が出ていたのか!」と驚くこともあれば、お気に入りの1冊が絶版になってしまっており、ショックを受けることもしばしば。例えば先日、リチャード・バックの『イリュージョン』がもう出版されていないという事実を店員さんに教えてもらったときは、わが家の柱が人知れずシロアリに喰われていたような気持ちになってしまいガックリしてしまった。
膨大な中から抜き出し
一昨年、日本で出版された書籍の数は7万8349タイトルもあった。一日にならすと、約215冊もの本が生み出され、僕らの前を通り過ぎてゆく。あるものは、その存在に気付かれもせずに…。その原因を探っていくと、流通において書籍が貨幣化している問題や、ベストセラーのみへ偏重したアイデアに乏しい広告展開、人が本に求めるものの変化(考え続ける動機さがし→答えさがし)などなど、さまざまな要因が絡み合っている。それを深くえぐるとなると、もう少し紙面が必要になってしまうし、なんだかどんよりと暗澹(あんたん)たる気持ちになってくるので、今日はもう少し明るくて楽しい話をしよう。