ブッシュパイロットという職業がある。道路も鉄道もない辺境の地を小型飛行機で飛び回り、人や物資を運ぶ操縦士の名称だ。彼らの助けなくしてはアラスカでの撮影は成り立たない。
厳冬期。マッキンリー山麓の氷河上でかまくら生活を送りながら、オーロラを撮る。その氷河へたどり着く唯一の手段が、パイロットによるフライトなのだ。
数メートルに達する積雪に覆われた氷河に無事着陸するには、並外れたテクニックを要する。着陸地である雪原が、あまりに均一に白く平坦で、どこまで高度を下げれば機体が雪面に接するのか、把握できないからである。
目を凝らしても地面がどこにあるのか分からない。不用意に着陸を試みれば、機体は雪面と突然接触し、重大事故は避けられないだろう。
そんな無謀とも思える環境での着陸を可能にするのが、腕のあるブッシュパイロットなのである。
≪真っ白な雪原 誘導灯は黒いゴミ袋≫
着陸に備えた準備は出発前から始まる。黒いゴミ袋にこぶし大の雪球を入れ、大きなてるてる坊主状の袋を3、4個用意する。