【佐藤優の地球を斬る】
昨年(2013年)12月26日の安倍晋三首相の靖国神社参拝を口実に、ロシアが北方領土交渉の「卓袱(ちゃぶ)台返し」をしようとしている。これに対する日本外務省の警戒感があまりになさすぎる。
安倍首相が靖国神社に参拝した26日にロシア外務省のルカシェビッチ報道官名で公式ウェブサイトに掲載されたコメントをロシア語から全訳しておく。
<モスクワでは本年12月26日に安倍晋三・日本国首相が、極東国際軍事裁判で有罪とされたA級戦犯の魂を祀(まつ)っているとされる靖国神社を参拝したことに関心が向けられている。
東京の政府は、この神社への参拝が第二次世界大戦による日本の侵略によって苦しんだ人々によって痛みを伴って受け止められることを、よくわかっている。過去の歴史に対する正しい理解が、東京と戦争の年月に日本軍国主義と戦った近隣諸国との現在の関係の重要な基盤を構築している。その背景には、日本社会に世界で一般に受け入れられている第二次世界大戦の結果の評価と異なる偏った見解を押しつけようとする一部の勢力の企てが強まっていることがある。日本政府の長のこのような行為に、遺憾の意を表明せざるをえない>