2013.10.31 15:30
【食を楽しむ】
JR浦和駅(さいたま市浦和区)を降りると、愛らしくほほえむ石像が出迎えてくれる。ウナギをモチーフにしたキャラクター「浦和うなこちゃん」。生みの親は今月、94歳で死去した漫画家、やなせたかしさんだ。江戸時代には中山道の宿場町として栄えた浦和は「うなぎの街」として知られる。ウナギ料理は古くから地元の食文化として親しまれ、「かば焼き発祥の地」とする伝承もある。
美しい艶に、食欲をそそる香りが広がる。ウナギのかば焼きを食べる「土用丑の日」の伝統は全国に根付き、愛好家は海外にまで広がる。
埼玉は海に面していない「海なし県」だ。だが、浦和周辺は荒川や別所沼など河川や沼、湿地帯があり、ウナギをはじめ、ナマズやドジョウなどが豊富にとれ、古くから川魚の料理店が軒を並べていた。
江戸時代の早い時期、ウナギのかば焼きが地元・浦和の神社に奉納されたとする伝承もある。つまり「日本初のうなぎのかば焼き」だ。交通網が拡充し、食文化も花開いた江戸時代。浦和のウナギは旅人を通して評判が広がり、参勤交代の大名に届けられたという記録も残る。
店ごとの「歴史」
100年を超える老舗も多い浦和のウナギ料理店。1886(明治19)年創業の「萬店(まんだな)」もそうした店の一つだ。