さすが…安価な中国製とは違う 驚きの切れ味に感動!ネット拡散でアピール

2016.2.15 07:02

 日本を訪れる外国人観光客が増える中、出刃包丁や刺し身包丁などの「和包丁」の人気が海外でも高まっている。和食ブームの中、驚きの切れ味がインターネットなどで話題となり、日本有数の包丁の産地・堺市や隣接する大阪市では、専門店や百貨店が豊富な品を取りそろえ、使い方も実演。和食の基本的な調理道具として、包丁の魅力をアピールしている。(牛島要平)

 目の前で実演

 「この包丁でトマトを切ると、ほら、汁がこぼれません。魚を切っても刺し身が傷みにくいですよ」

 大阪・新世界の観光名所・通天閣に近い包丁専門店「タワーナイブズ大阪」。カナダ出身、デンマーク育ちの経営者、ビヨン・ハイバーグさん(46)が和包丁を実演すると、外国人観光客らは驚いた。

 平成4年に来日し、英会話講師などをしていたビヨンさんは、土産にもらった堺の包丁の切れ味に感動。その魅力にはまり、24年、今の店を構えた。

 店で扱う包丁は、洋包丁も含めて約300種類。一番人気は、肉、魚、野菜のすべてに対応した三徳包丁(1万9800円)で、欧米や東南アジアなどから次々と買い求めにくる。昨年7月には東京スカイツリー近くにも出店し、外国人のリピーターが増えている。

 「和包丁は口コミやネットで人気が拡大している」とビヨンさん。「切れ味を試し、ぴったりの包丁を見つけてほしい」と話す。

 海外に活路

 もともと和包丁は刀鍛冶などの鉄工技術から発展したが、国内では近年、スーパーマーケットなどで調理済みの食材が増えたこともあり、包丁を使う家庭は減少。中国などから安価な包丁も流入し、和包丁を取り巻く環境は厳しい。

 そうした中、最近の和食ブームで海外に新たな市場が急拡大している。

 財務省の貿易統計によると、昨年の包丁(テーブルナイフなど除く)の輸出額は3年連続で増加。輸出額は11月時点で、前年比約7億円増の約68億8千万円に達した。

 和食ブームで海外の調理関係者の間でも、和食にはフグやハモのように素材ごとに専用の包丁があり、使い方にも鍛錬した技術がいることが知られるようになった。ある業界関係者は「そもそも和包丁がなければ和食はつくれない。和食とともに発展してきた包丁づくりの技術が、海外のプロの料理人にも見直されてきた」と指摘する。

 品ぞろえで勝負

 こうした和食ブームを背景に、百貨店や専門店などでは台所用品コーナーの和包丁を充実させている。

 大阪・梅田の大丸梅田店では英語で包丁の使い方や研ぎ方を説明した文書も用意し、外国人観光客らに配布している。

 大阪・千日前の道具屋筋で「堺一文字光秀」の商標を掲げる包丁専門店「一文字厨器」では、包丁を購入する外国人が昨年、1日平均約10組と前年比で倍増した。価格帯2~3万円の刺し身包丁などが売れ筋という。

 「堺の包丁は妥協しないものづくりが評価され、品薄になるほどだ」と田中睦之社長。急増する外国人観光客向けに、刃の側面に購入者の名前を彫るサービスもしており、「和包丁の市場はまだまだ拡大するのでは」と期待している。

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