新型コロナウイルスで打撃を受けた飲食業を支援する「Go To イート」のインターネット予約によるポイント付与事業が終了したのに伴い、低価格帯の店の予約件数が急減していることが7日、飲食店の予約データで分かった。庶民的な低価格店は原価率が高いため、高級店に比べて売り上げの減少がより経営に響きやすいとされる。新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない中、厳しい年の瀬となりそうだ。(荒船清太、本江希望)
「コロナの影響で売り上げが落ちたのでイートに参加したが、こんなに早く終わるなんて」。新橋駅近くにある焼き鳥店「新橋あかべえ襷(たすき)」(東京都港区)の店長、島村圭さん(47)は、ポイント付与事業が早期に終了したことに戸惑いを隠せない。
昨年に比べて売り上げは半分以下になり、イートによる集客アップに期待していた。「途中から参加したので1カ月間だけだったが、利用者は15人と思ったより少なかった。12月も続けてほしかった」とこぼした。
居酒屋「魚と酒 はなたれ 新橋店」(同区)の代表、西野譲(ゆずる)さん(38)も「イートのネット予約利用者が約200人おり、売り上げの10%ほどを占めていた」と打ち明ける。コロナの影響で昨年から6割ほど売り上げが落ちる中、貴重な収入源となっていたが「(ポイント付与事業の終了で)書き入れ時の12月も、コロナの影響で厳しそうだ」と表情を曇らせた。
予約管理システムを提供する「トレタ」が契約する飲食店約1万店のデータによると、1人当たり予算2千円未満の飲食店の予約件数は、11月の1週目(2~8日)に前年同期比128%とピークを迎えたが、全国での感染拡大や、イートのネット予約分が相次いで終了したのを受けて急減。4週目(23~29日)には前年同期比92%と、大幅に落ち込んだ。
2千~6千円未満の店も、11月の1週目が前年同期比87%だったが、4週目には64%と急落。これに対し、6千円以上の店は87%から76%と、下げ幅が小さかった。
緊急事態宣言が発令された4月から、「イート」が始まった10月までの間の予約回復率をみても、6千円以上の店がほぼ一貫して2千~6千円未満や2千円未満の店を上回っていた。
一方、全国の飲食店などの会計事務を扱う「ポスタス」によると、予約なしの来店も含めた4月以降の実際の売上高では、1人当たりの予算が2千~8千円未満の店の回復率は前年同期比55~60%。2千円未満の店は60~67%、8千円以上の店は61%で、客足の戻りが鈍い現状がうかがえる。
外食の仕方、コロナで変化
多人数より少人数、遅めより早め、酒より食事-。飲食店に関する売り上げや予約件数に関する民間データからは、新型コロナウイルス感染拡大に合わせて人々が外食の仕方を変容させていった様子が見て取れる。
「トレタ」の飲食店データで目を引くのは、予約人数の変化だ。3月初旬の時点で「10人以下」は前年同期比39~86%だったのに対し、「11人以上」は20%台にまで減少していた。
4月の緊急事態宣言後はいずれの規模の予約人数も10%を割り込んだが、その後は少ない予約人数ほど回復が早まった。11月の4週目だと「2人以下」は前年同期比103%だが、11人以上は16%にとどまった。
予約が好まれる時間帯も傾向が出ている。緊急事態宣言以降、他の時間帯よりも回復率が上回っているのは、午前11時~午後3時の昼食時と午後3~5時の時間帯。これに対し、午後5~9時の夕食時と午後9時~午前0時の深夜は苦戦が続く。
一時は前年と比べて7割近くにまで回復していた深夜の予約件数は、営業時間の短縮要請が大都市で相次いだ11月の4週目には5割を割り込んだ。
業態でも違いが表れている。「ポスタス」のデータによる8~10月の売上高の前年同期比の回復率をみると、しゃぶしゃぶ店は全体の平均(73%)を大きく下回る59%。鍋を介した感染を避けた可能性がある。これに対し、個別に提供するカレー店は、89%まで回復していた。