終活の経済学

コロナ時代の葬儀社選び(1)「6時間以内に決定」半数以上 (1/2ページ)

 「新しい生活様式」の中で、葬儀のスタイルも変わろうとしている。身近な人が亡くなったときに、遺族は「葬儀社」や「葬儀のスタイル」の早急な決定を迫られる。葬儀社選択にはどのような考え方があるのか。コロナ時代の葬儀社選びのポイントを紹介する。

 厚生労働省が公表している「人口動態統計」によると、日本人の75%、実に「4人のうち3人」が病院や診療所で亡くなっている。遺体を前に、遺族が悲しんでいる余裕はない。遺体引き取り、葬儀社の決定、親族・知人への連絡…。あらゆることが一気に襲ってくるのだ。

 葬儀・お墓などのポータルサイトを運営している「鎌倉新書」(東京都)の調査によると、「生前に故人と葬儀業者を決めていた」と回答したのはわずか28.1%。半数以上が6時間以内に決めたと回答している。いかにドタバタした渦中で、葬儀社を決めなければいけないのか分かるだろう。

 いまは新型コロナウイルスの持ち込みを防ぐため、見舞いすら禁止にしている病院や診療所もある。院内や霊安室に肉親が集まって今後のことを相談する光景は確実に減るだろう。院内や霊安室に入ることを許可された極少数の肉親だけで、すべてを決断しなくてはならない。

 1:病院推薦の社に

 「夫は市営病院で亡くなった。がんで2年以上闘病していたが、急に容体が悪化して。なんとか臨終には家族が集まれたので良かった」と愛知県の山田仁美さん(仮名、60代)。

 「葬儀社は決めていなかったので困ったが、医者の紹介で市内の葬儀社が声をかけてきた。何も決めていなかったので、そのまま遺体搬送と葬儀をお願いした。比較とか、そういうことを考える時間も気力もなかったので助かった」

 夫が亡くなったのは4月。愛知県でもコロナウイルスの感染が確認され始めていたが、葬儀をやらないという選択肢は考えなかった。小規模ながら立派な葬儀をした。

 だが、山田さんはこうも話す。「もしかしたら費用が高かったかもしれないとは思う。お布施とか合わせてトータルで150万円くらいだったか。でも、丁寧に葬儀もやってもらえたし、お金のことはもう考えていない」

 患者が亡くなると病院は病室を空けなければならない。多くの病院では特定の葬儀社と契約を結んでおり、葬儀社スタッフが霊安室までの移動を担ったり、死後の遺体処理を行ったりする。そのために院内や霊安室に葬儀社スタッフが待機している病院すらある。病院に待機している葬儀社が、遺体搬送や葬儀について声をかけるのは珍しいことではない。

 もちろん、断っても構わない。しかし、いつまでも霊安室にいられるわけもない。ましてや病院は、死亡理由がコロナでなくても、いままで以上に念入りに病室や霊安室の消毒をするだろうから、遺族は追い立てられるように遺体を引き取らなくてはならないだろう。時間が限られている中で、待機している葬儀社に遺体搬送を依頼するケースは増えるかもしれない。そして、そのまま葬儀の執行まで依頼する。

 遺族にとって悩まずに遺体搬送、葬儀までの流れがスムーズにできるメリットは大きいが、じっくり考えたり、相見積もりを取って比較したりする機会が失われるデメリットもある。

 2:生前に予約

 亡くなってから今後のことを悩む前に、事前に葬儀社を決めている人も3割ほどいる。

 鎌倉新書のデータによると、28.1%が生前から葬儀業者を決めていたと回答。そのうち「1年以上前から決めていた」との回答は37.7%、「6カ月~1年未満」が31%だった。

 「1年以上前から葬儀社を決めていた」と話す東京都内在住の須原亮子さん(仮名、60代)は、父親を今年5月中旬に亡くした。

 「父は4年半も寝たきりで、認知症もあり私のことも分からなかった。弟を交えて、叔父が亡くなったときにお世話になった葬儀社さんと『そろそろかもしれない』『葬式はどうするか』と何度も話し合っていた。一般葬を行う予定で打ち合わせていたが、コロナのこともあるし、家族葬にした。葬儀社も嫌がらずに変更に対応してくれた。事前に葬儀社を決めていたので、慌てず余裕をもって判断できた」と須原さん。

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