大阪の天神祭、東京の隅田川花火大会、秋田の全国花火競技大会(大曲の花火)…。新型コロナウイルスの感染拡大で全国各地の花火大会が中止に追い込まれている。新型コロナの収束を願い、来年の開催が期待される中、早くも来夏の開催に気をもむ事態が発生している。来年も新型コロナのことを心配しているのかと思いきや、理由は別のところにある。それは東京五輪の延期だ。
警備員がいない
日本海を望む三国サンセットビーチ(福井県坂井市)を会場に毎年8月、1万発の花火を打ち上げる「三国花火大会」。23万人の観客が訪れる北陸最大級の花火大会だが、新型コロナの感染が拡大する前の今年1月、今夏の開催中止が発表された。
実行委員会事務局の担当者は「今年は開催すれば40回の節目となる記念大会。いつも以上の混雑が予想され、五輪と重なっての開催は警備上、難しかった」と説明する。
例年は警備員140人ほどの派遣を受け、警察や地元ボランティアも合わせ約300人の警備態勢を敷いている。だが今年は、7月24日から8月9日までの予定だった東京五輪に警備員の人員が取られるため、花火大会で十分な警備員を確保するのが難しい状況が判明した。
さらに、観客の輸送に必要なシャトルバスも東京五輪で出払ってしまう。このため花火の準備期間も考慮し、開催の7カ月も前に取りやめたという。
花火大会など雑踏警備に万全な態勢が求められている。平成13年、兵庫県明石市で、花火大会の見物客らが歩道橋で転倒し、11人が亡くなった事故が大きなきっかけだ。
なぜ1年前に判断か
警備人員が確保できない悩ましい事情は各地も一緒。花火大会をメインイベントとした同県三田市の「三田まつり」は昨年11月、今年の開催中止を決定。神奈川県鎌倉市の「鎌倉花火大会」も昨年12月に取りやめたが、花火台船が停泊する湘南港(同県藤沢市)が五輪のセーリング会場となり使用できないことのほか、警備人員の確保が難しいことが理由だった。
こうした中、新型コロナで東京五輪の来年への延期が決定。当然、警備員が確保できない事態も来年に持ち越されることになる。
三国花火大会の実行委員会事務局の担当者は「来年も同じ警備の問題が生じるが、感染防止のため実行委の会合もままならず、議論さえできない」と苦慮し、三田市は「五輪の状況も、コロナの状況もその時どうなっているのか分からず、議論が進められない」と困惑。鎌倉市観光協会も「来年もコロナの影響で難しい判断になる」と話していた。
すでに影響が表面化したところも。毎年8月開催の「宮島水中花火大会」(広島県廿日市市)は、厳島神社の鳥居を包み込むような花火が見どころだが、警備態勢が整わないために今年6月、今夏に続いて来年の中止が発表された。
1年先の花火大会の中止を現段階で決めた理由を、宮島観光協会は「花火の時期は旅館に1年前から宿泊予約が入ってくる。早く決めないと、それだけ影響が大きくなる」と打ち明ける。
状況は全国どこでも変わりはないとみられ、今後も2年連続で花火大会の中止を決めるところが出てきそうだ。