親が認知症になると口座が凍結され、預貯金が引き出せなくなるなどお金の問題が生じる。そうなる前に、家族で話し合い、財産を託せる「家族信託」制度を知っておきたい。
不動産管理会社「日本財託」で、多くの認知症とお金の相談に対応してきた家族信託コンサルタントの横手彰太さんがいう。「親が亡くなると預貯金口座が凍結されるのは知っている人も多いだろう。しかし、認知症でも同様なことを知らない人が意外と多い」
認知症になっても本人の介護、生活の資金は必要だ。「平成19年に施行された新信託法で誕生したのが『家族信託』だ。これなら、家族など信頼できる人が財産の管理を行うことができる。“転ばぬ先のつえ”だと考えてもらいたい」
実際の仕組みは図のように、財産を持つ「親」が「子」に財産を預ける信託契約を結ぶ。委託された子は、生活や介護にかかわる資金を家族信託専用口座から引き出せ、「財産凍結で身動きができなくなるリスクを避けられる」。
そんな財産はないから関係ない-という人もいるかもしれないが、横手さんは、「首都圏に住んでいれば、不動産資産だけで数千万円という人も少なくない。家族信託について知っておけば後々のもめ事にも備えられる」と話す。(取材協力 日本財託)