NHK記者過労死 婚約者が遺体に指輪、最後のメールは「パパありがとう」

NHK放送センター=4日夜、東京・渋谷
NHK放送センター=4日夜、東京・渋谷【拡大】

 佐戸未和さんは、結婚することが決まっていた。荼毘(だび)に付される際、婚約者の男性が遺体に指輪をはめたという。両親が明らかにした。母親は「心から笑える日は一生来ない」と涙を流した。

 「未和が生まれたのは私が31歳のとき。同じ31歳でこの世を去ってしまった。親としてわが子を守れなかった深い後悔の念にさいなまれている」。父親はそう心情を吐露した。メーカーの営業職で、死去の知らせは海外赴任していたブラジルで聞いた。一緒にいた母親は状況が分からず錯乱状態に。急いで現地をたち、夏場で損傷が激しかった遺体と対面した。

 それまで父親は「24時間臨戦態勢のような記者の勤務は肉体的にも精神的にも過酷。あの小さな体でよくがんばっているな」と感心していたという。

 「パパありがとう。悲惨な誕生日だったけど体調は戻った。忙しいしストレスもたまるし、1日1回は仕事を辞めたいと思うけど、踏ん張りどころだね」

 最後のメールは自身の誕生日の翌日だった。誕生日には取材相手を訪問する「夜討ち朝駆け」が続き、トイレにも行けずぼうこう炎になっていたという。

 死亡後、NHKの関係者から「記者の仕事は個人事業主のようなもので、休憩も、出勤時間も自由にできる」と言われた。父親は「私には理解できない。管理をせず、結果的には長時間労働を強いて過労死に至った。親としてやり切れない。もう過労で亡くなる人がいないようにしてもらいたい」と訴えた。