ミュージシャンのライブや2.5次元ミュージカルといったライブエンターテインメントの市場が盛況だ。売上も観客動員も伸び続けており、改装のタイミングとぶつかって会場が不足するほどになっている。賑わいに水を差すように、チケットを買い占め高額で転売する問題も深刻化して、アーティストや音楽事業関係者が改善に向けた声明を出した。ライブエンターテインメントの世界で何が起こっているのか?
3日間で8万人。それだけの観客がさいたまスーパーアリーナを埋め尽くし、5時間にも及ぶライブの間、ほとんど立ちっぱなしで声援を送り続けるイベントがある。「アニメロサマーライブ」だ。2005年から始まって今回が12回目となった「アニメロサマーライブ2016 刻-TOKI-」は、8月26日から28日まで3日間にわたって開催。26日には、神田沙也加さんがボーカルや作詞などを担当する音楽ユニットのTRUSTRICKや、アニメミュージックシンガーとして活躍するKOTOKOさん、May’nさんらがステージに登場。大歓声の中で持ち歌を披露した。
黒崎真音さんがボーカルを務める音楽ユニットのALTIMAが活動を休止するという驚きの発表もあって、最後のステージに会場から大声援が贈られた。ゲームから生まれた音楽ユニットのアイドルマスターシンデレラガールズがトリを務め、最後には出演者がステージ上に勢ぞろいして初日のライブを締めくくった。翌日、翌々日と続いたライブも同様に超満員の中で繰り広げられた「アニサマ2016」。その賑わいが、ライブエンターテインメント人気の凄さを表している。
「本当に急成長している。国民的な娯楽の中にライブが入ってきた」。コンサートを企画・運営するディスクガレージ代表取締役で、コンサートプロモーターズ協会の会長も務める中西建夫氏は、40年近くに及ぶライブビジネスの中でも、今の状況が空前の活況にあたると感じている。
7月に幕張メッセで開かれた第3回ライブ&イベント産業展で講演した中西氏。「ユーザーのニーズの変化があり、プレミアムな体験をしたいと思うようになった。ミュージシャンやプロダクションにライブ志向が強まった。テレビ局など他業種の参入もあり、チケット購入方法も多様化して買いやすくなった。SNSによる口コミの効果もある。野外フェスティバルや大型イベントが浸透してきたこともあるだろう」と、音楽ライブが延びてきた理由を挙げた。