ついにこの日がやって来た…! “世界でもっともゆっくり走る特急列車”という、ちょっととぼけたキャッチフレーズがなんともユーモラスな「グレッシャー・エクスプレス(氷河特急)」。鉄道大国スイスの数ある列車のなかでも、指折りの人気を誇る観光列車だ。
アルプスの2大リゾート、ツェルマットとサン・モリッツをつなぐこの路線は、約8時間というそこそこ長旅になるため、グループツアーではハイライトの一部区間だけ乗車することが多い。私はもちろん全踏破を目論み、前日からツェルマットに乗り込んだ。
ツェルマットといえば、あの名峰マッターホルンに抱かれた風光明媚な村で、登山家が集まるのはもちろん、じつは鉄道ファンにも愛されている。アプト式ラックレールをガッガッと噛ませながら急勾配を登り、真横にマッターホルンを眺める「ゴルナーグラート・モンテローザ鉄道」も、ツェルマットを拠点に上り下りしている。