NHKの放送90年ドラマ「経世済民の男」、阪急電鉄の創業者、小林一三氏の半生を描いたシリーズ第2弾にこんな場面があった。元上司の岩下清周氏に阪神電気鉄道との合併構想を持ち込まれた小林氏が「阪神を買収する形ならいいですよ」と応じ、岩下氏が複雑な表情を浮かべる。いまでこそ、阪急は阪神株の公開買い付け(TOB)を通して経営統合したことは周知の事実だが、ドラマは新興の阪急が先行する阪神と競争していた時代だ。台詞は脚本家の意図を感じるが、現実の統合劇にもテレビさながらのドラマがあった。
画期的アイデア
ドラマは、趣味の小説を書きながら三井銀行大阪支店でのんびり働いていた小林氏が、新しい支配人として着任した岩下氏のもとで仕事の面白さに目覚めるところから始まる。
その後、北浜銀行を設立した岩下氏から「新会社の社長にならないか」と誘われ、銀行を辞めて大阪に戻ったところ株式市場が暴落。北浜銀行が関わっていた観光列車の清算をまかされたが、画期的なアイデアで弱小電鉄の再生に動き出して…。
小林氏は阪急の前身、箕面有馬電気軌道の敷設計画では当時、田園風景が広がっていた大阪北部への鉄道開設という試みに「何を乗せるのか」と揶揄(やゆ)する声もあったが、小林氏は「お客がなければつくればいい」と強調。