■「情」に道理を求め生きるべし
本書は著者も「はじめに」で書いているように、吉田松陰の「武教全書講録」の中から男子の生き方を抜粋したもの、即(すなわ)ち武士は如何(いか)に生きるべきかと説いているものです。「武士」は儒学の祖、孔子の言う「君子」であり、現在の日本では「サラリーマン」です。私は現在、本書のバックボーンである儒学を建学の精神とした東日本国際大学の副学長を務めており、儒教の精神には折に触れ学んでいますが、学べば学ぶほど今の日本に必要不可欠な学問であると感じます。儒学は儒教という宗教の教義と思われていますが、神の存在を孔子は強調していませんので、儒学という思想と考えた方がいいでしょう。儒学では孔子と孟子の教えがあり、仁や孝など原則論は同じとしても、中庸を特に重んじた孔子と易姓革命を中心に社会改革を主にした孟子には若干の考えの差があります。
吉田松陰は著書『講孟●記(こうもうさっき)』等を読む限り孟子を敬愛していたようです。恐らく明治維新の根本原理は易姓革命の理論であったのでしょう。