光が見えたのは同じ年の12月。心臓手術をしたことで約1カ月半続いた高熱がスーッと下がってきました。手術後先生に具合を聞かれ、「最悪です」。そう答えた瞬間、「俺はしゃべることができるじゃないか」と気付いたんです。それまでは「体が動かない」ことばかり考えていたので、少し気持ちが楽になりましたね。
同じタイミングでわずかに指先が動いた気がしました。「神経がつながっている。まだ(プロレスで負けを意味する)3カウントは入っていない」。闘志に火が付きました。「もう一度自分の足で立つ。そして必ずリングに上がる」。周囲にそう宣言し、前向きにリハビリに取り組み始めました。
リハビリでは意識と体の動きを合わせる訓練が続きました。思い通りにならない体にいらだちを感じたこともありましたが、新弟子時代の厳しいトレーニングを思い出し、「やればできる」と気持ちを奮い立たせました。