■本物を見極め世界に伝えたい
きめ細かで伸びやかな感性にあふれた優れたデザイン、誰もが胸をときめかせる魅力的なコンテンツ、目にも鮮やかに丹精込めて作られたおいしくて体にやさしい食べ物、心づくしのおもてなしや、すみずみに気配りの行き届いたサービスと、日本は世界に誇るべき宝物にあふれている。作り手や送り手の思いと、それを受け取り、愛する人たちの思いをつなげて、本当の豊かさを追求する。国と民間企業が一体となり昨年11月に発足した「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」の先頭に立ち、それぞれに掌中の玉と大切なものを持つさまざまな人と出会いながら、国の内外を問わず足を運ぶ日々を重ねている。
「世界は想像する以上の驚くべき速さで変化しています。時代の流れや空気を捉え、本当に求められているものは何か、いかにして本当の本物がそれにふさわしい価値として認められるかを探らなければなりません」
まだ街には休眠気分の残る1月初旬、アジア数カ国で市場調査を行い、急速な時間の流れを肌に感じ取ってきた。高級ホテルやショッピングモールの駐車場にはイタリア製高級車が至る所に止められ、その数は昨夏に米西海岸のビバリーヒルズで目にしたよりもはるかに多かったという。
「恐ろしいほどの勢いで富裕層がアジアで増えていることが感じ取れました。ヨーロッパの高級ブランドの直営店も、ものすごい数です。その一方で日本食のレストランや食料品店も確かな存在感を示し、それも少し前ならよく見かけたまがい物ではなく、価値のある本物が圧倒していて大きな可能性を見つけることもできました」