【著者は語る】作家・堺屋太一氏 「団塊の秋」 (1/2ページ)

2014.1.4 05:00

 ■定年後の「好きなこと」見つける手助け

 この小説を書き終えたとき、私は大きな達成感を覚えました。1947年から49年に生まれた戦後のベビーブーマーたち、すなわち「団塊の世代」は670万人に上り、高度経済成長を支え、文化を牽引(けんいん)し、日本社会に多大な影響を及ぼしてきました。

 38年前に発表した『団塊の世代』では西暦2000年までの彼らの人生とその背景となる社会を予測しましたが、『団塊の秋』では15年から28年、彼らが80歳を迎えるまでを予測し、小説として描いています。

 予測小説はできるだけ正確に、根拠をもって将来を予測する必要があり、『団塊の世代』がその分野をひらくことになりました。この小説でも随所に私の予測をちりばめています。また、各章の冒頭に「未来の新聞記事」を書きました。読者は私の予測とご自身の考えを照らして、未来の備えに役立てていただけるのではないでしょうか。

 タイトルの「秋」は、中国の五行説にある玄冬、青春、朱夏、白秋の考え方にちなんでいます。人生の始まりは冬。そして白い秋に終わる。秋は収穫の時期です。団塊の世代が70歳を超えて迎える季節は実りの秋であるはずです。

 この予測小説に登場する男女7人の団塊の世代たちは、想定外の人生に直面します。年金の先行きもままならず、サラリーマンとして勤めあげたところで、どんな地位にたどり着いた人も結局は大差がない。息子は中年になっても結婚せず、若いころに立てた志には苦労ばかりをさせられる-。それでも彼らは、人生において何が真実なのかを手さぐりしながら、自分なりに納得できる着地点を見いだしていくのです。

 「どうすれば定年後を充実させられますか」という問いを、多くの団塊の世代から受けます。私の助言はひと言、「好きなことをしなさい」。

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