政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)フロンティア分科会が、7月6日にまとめた報告書で「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる。雇用の流動化で労働生産性を高め、国家の衰退を防ぐ狙いというが、転職を支援する制度面の整備が進まなければ、安易なリストラの助長に終わる懸念もある。
引き上げに逆行
「定年の延長は大反対。45歳ぐらいから自分の第2の人生を考えさせるべきだ」。3月に行われた同分科会のうち、経済成長のあり方などを議論する繁栄のフロンティア部会で、委員を務めるローソンの新浪剛史社長は力を込めた。
新浪社長自身は「55歳定年制」を提唱しているが、その言葉の裏には、政府の方針通りに定年が65歳に延長されれば、若い人の雇用機会がますます減ってしまうという危機感がある。
報告書も「現在の60歳定年制は企業に人材が固定し、新陳代謝を阻害している」と指摘する。定年後、新たな知識を得たうえで同じ企業で働くケースもあれば、経験を生かして起業したり、民間非営利法人(NPO)に関わることなどを想定しており、「イノベーションが必要な産業を受け皿にすべき」(新浪社長)との声は強い。