世界初の承認を目指す「がんペプチドワクチン」を使用した臨床試験(治験)で29日、創薬ベンチャーで東証マザーズ上場のオンコセラピー・サイエンス(川崎市)と塩野義製薬(大阪市)がワクチン供給に関する新契約に合意、対象のがんを拡大しワクチンの中身も強化して実施することが明らかになった。
日本ではがん治療薬はもとより医薬品全体の輸入超過が続いており、日本発の新薬承認を目指す治験は、患者のみならず、日本の国益をかけた試みともいえる。
今回合意によると、対象となるのは主な治験は膀胱(ぼうこう)と食道のがんに対するものだ。両治験とも第1・2相の段階にあり、年内にも国内の医療施設で最終段階の第3相治験を始め、3年から5年先をめどに実用化したいとしている。
治験で使用するペプチドワクチンは、東大医科学研究所の中村祐輔教授(4月から米シカゴ大に移籍)がゲノム(全遺伝情報)を解析し、がん細胞で特別に働いている標的遺伝子を発見。オンコ社がその標的に効く可能性の高いワクチンとして開発したもので、次世代ワクチンとも呼ばれている。
ペプチドはタンパク質の断片で、患者の免疫力を増してがんに対して攻撃するため、副作用が少ない。治験では、このワクチンを複数種類投与するため、より高い効果が期待できる。