勤労統計不正 「責任感が欠如」 データ軽視、政策への信頼揺らぐ

 厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査は、経済政策の信頼を揺るがした。海外の先進国に比べ、日本政府の統計作成に携わる職員は少ない。専門家の間では、客観的なデータに基づく政策判断を軽んじる風潮が不正の遠因になったとの見方も出ている。

 賃金や労働時間の変動を示す勤労統計は景気の浮き沈みとの結び付きが強く、政府が定めた基幹統計の一つに位置付けられている。政府の経済対策や日銀の金融政策は、こうした重要統計を使って経済情勢の変化をとらえ実施される。

 第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「統計が正確であることは、政策の必要性を判断する上での大前提。その信頼を損なった影響は大きい」と強調。今回の不正は悪質で「統計作成に対する責任感が欠如しているように見える」と懸念する。

 ある市場関係者は「政府内で統計の重要性が認識されてこなかったことが問題だ」と話す。国の統計関連部署の職員は独立行政法人統計センターを含めて2016年時点で約2600人。日本より人口が少ないカナダ(約5000人)やフランス(約2700人)にも及ばない。

 不正の再発を防ぐには海外に比べ脆弱(ぜいじゃく)とされる統計部署の強化や、社会の変化に合わせた調査手法の見直しが不可欠だ。SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは「インターネットを使った調査を取り入れるなど効率的な手法の検討を進めるべきだ」と指摘する。