■データ・ドリブンを考えよ
あらゆるモノをインターネットでつなぐIoTや人工知能(AI)の時代に突入した現在、技術革新はモノづくりやサービス分野など、さまざまなビジネス分野で進む。知財ポートフォリオマネジメントの第一人者として知られる米オラクル上級特許顧問のエリック・サットン氏が講演のため来日したのに合わせ、話を聞いた。
--現在の仕事、活動は
「オラクルで各ビジネス部門に関係する特許ポートフォリオの管理、特許品質向上を担当している。社外ではシカゴ・ケント法科大学院で教え、特許弁護士の能力とデータ活用の関係性などを研究している」
--米国では以前からコンピュータープログラム関連やDNAの特許など、特許としての適格性(発明該当性)を認めるか、認めないかの議論がなされている。次世代の企業競争力を考える上で大きな課題だが
「その件で私自身、米特許商標庁がカリフォルニアで開催した特許適格性についての法的意味を探る円卓会議(2016年)に招聘(しょうへい)され、(特許適格性を記している)米特許法第101条の観点から、自らの分析を発表したことがある。実は(特許出願を担当する)特許弁護士は、現実に特許適格性を問題にする可能性が低い審査官のいる部署を選んでいる」
--難解になってきた特許適格性の解釈を乗り越えるため、特許弁護士は現実の審査官の動きを見ることに有効性があると考えているということか
「米国で特許権を得るための考え方として、データを解析して、その結果を基に次のデータ解析を行っていくデータ・ドリブン・アプローチがある。戦略的、効率的に動け、費用も抑えられる。私自身、ビッグデータ分析と特許業務の自動化に関する研究に精力を傾けており、パットノーテクニック(Patnotechnic)という私のブログで事例を提供している」
--審査官のデータを解析し、特許化の見込みを立てたり、出願の補正をするわけだ
「現代で強固な特許ポートフォリオを構築するのに重要なことは、明確なポリシーに加え、自社の技術をカバーできる効率的なツールを持つことだ。不十分な情報で行ってきた手作業による評価、処理の限界を洗い出し、修正していくことだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)
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【プロフィル】エリック・サットン
2008年ジョンマーシャル法科大学院修了。法律事務所勤務を経て、14年米オラクル入社、上級特許顧問。法務博士、特許弁護士。