ノーベル文学賞受賞が決まった日系英国人作家、カズオ・イシグロ氏(62)。ビッグニュースから一夜明けた6日、東京都内の書店はイシグロ作品を買い求める人でにぎわい、在庫が売り切れる店も。出版不況に苦しむ書店業界からは「イシグロ効果」に期待する声が上がっている。
東京都千代田区の三省堂書店神保町本店は入り口に近い棚に、英語版も含めたイシグロ氏の著作約50冊を陳列。「ノーベル賞受賞おめでとうございます」と書いたパネルも掲げた。
午前10時の開店と同時に入店した客たちが次々とイシグロ作品を購入。約1時間半後には日本語版は売り切れ、店員に在庫を問い合わせる客の姿が多く見られた。東京都内に住む日本語教師、西己加子さん(50)は「(ブッカー賞を受けた)代表作『日の名残り』を買いたかったが、どの店も売り切れ。明日からの3連休に読みたいので、また別の店で探します」と話していた。
三省堂書店神保町本店はノーベル賞の受賞決定後、イシグロ作品を出版する早川書房に1作当たり数百冊単位の追加注文をしたという。副本店長の松下恒夫さんは「物語は重厚だが、決して難解な作風ではないので読者層の広がりが期待できる。厳しい状況が続く書店業界にとっては非常に明るいニュース。多くの人が書店に足を運んで、いろいろな本に出合うきっかけになれば」と話した。