□国際政治・歴史学者 ロバート・D・エルドリッヂさん
■日本の安全保障環境厳しい
--エルドリッヂさんは2年前まで、在沖縄米軍基地で海兵隊政務外交部次長を務めていました。日米の安全保障を担う最前線におられたわけですが、中国との尖閣諸島問題や北朝鮮問題の深刻化など、日本の安全保障環境が厳しさを増しているといわれている現状をどうみていますか
「尖閣諸島に関しては、今の状況が続けば確実に中国に奪われるとみています。中国の狙いが尖閣奪取にあるのが明確であるにもかかわらず、それを許している日本にも問題があります。中国を刺激しないというのが、沖縄返還後一貫した日本の姿勢ですが、それによって日本の実効支配が空洞化しているのが現実です。施政権があるにもかかわらず、日本人の上陸を認めないというのも、国際社会から見ればおかしい。最近大幅に増えている尖閣周辺の領海や領空への中国船、中国機の接近・侵入に対し、海上保安庁や航空自衛隊の現場の人たちにだけ、危険な任務と責任を負わせるのは、無責任極まりないと思います。尖閣を取られてから奪回するのは非常に難しく、その前に取られない戦略、政策が必要です。だが、日本は無策です」
「北朝鮮問題では、日米にとって軍事的な選択肢はなく、対話と抑止しかないと思います。北朝鮮の軍事能力は大幅に向上し、必ず報復できる力を持っており、一番その被害を受けるのが日本です。日本国内には北朝鮮の工作員が潜入しているため、国内テロも想像できます。先制攻撃では自衛権を相手に与えてしまうし、今や相手の報復能力を完全に破壊することはできません。さらに日本が考えなければいけないのは、万一の場合の戦後処理が日本に有利な形になる保証がないということです。つまり、朝鮮半島における中国の影響力が拡大します。尖閣も北朝鮮も、日本にとっては非常に厳しい状況にあるといえます」