民政移行後、世界から投資が続くミャンマーの状況をこのほど来日した、ラウスタイランド法律事務所のファブリス・マッティ氏(フランス弁護士)に聞いた。タイ・バンコク、ミャンマー・ヤンゴンに拠点を置く、アジアで20年の経験を持つアジア知財問題の第一人者だ。
--企業法務の中で、なぜ知財の専門家に
「例えば特許法は科学技術と、商標はマーケティングと、著作権は芸術に関わる。知財の世界は単純ではなく、さまざまな知識とリンクして面白いからだ」
--ミャンマーでの知財の状況は
「著作権以外の知財関連法は未整備だ。特許や商標、意匠の公証登記機関がある。外国の正規品が流通する前から中国やタイの摸倣品が大量に流入しており、税関は製品を登録すると正規代理店を経ずに輸入された場合、通報してくれる。侵害対策では警告状を出すことに重きを置き、告訴前に和解で終わるケースが多い。摘発を行う警察などに日本企業が相談する際には、日本貿易振興機構(ジェトロ)の知財担当者が同席すると、相手が日本政府機関と受け止め、汚職を防ぐ暗黙の効果がある」
--ミャンマーでの知財関連法制定の動きは
「過去何回も検討され、国会上程がうわさされたが優先順位は依然低い。現在、法案のパブリックコメントを集めている。特許法の場合、法案に他国で成立した特許は除かれるのでそうでもないが、商標法は混乱するかもしれない。考え方がコモンロー(慣習法などの不文法)から大陸法(成文法)に変わり、“先使用”で商標を使った企業と、新法の下で“先出願”した企業の争いだ。しかし関連法の年内可決は難しい。さらに施行には出願受付システムや審査人材の準備など数年かかるだろう」