しかし、過去2回の事業で実際に移住した人は市が把握する範囲で単身者の2人だけだった。そのうちの一人、古川(こがわ)健太さん(35)は昨年3月、外資系企業を退職して横浜市から神戸市中央区に移住した。現在は職業訓練校に通い、ゲストハウスで暮らす。
父親が神戸市出身だったことから、神戸に住んでみたいという気持ちがあったといい、移住体験事業に参加した。「実際に1週間滞在して、とても暮らしやすい街だと思った」と振り返る。体験ツアーでは、神戸在住の外国人が集うバーめぐりに参加。そのときの縁で今のゲストハウスを紹介された。「街がコンパクトで移動も便利。神戸で就職して長く住みたい」と話している。
学生は就職時に市外へ
「人口の数だけにこだわらず、市民生活の質を高めたい」
福岡市に人口を抜かれた直後の記者会見で、神戸市の久元喜造市長はこう述べた。しかし、市の人口は16年に阪神大震災前の人口を回復したものの、23年をピークに24年から4年連続で減少が続く。なかでも若い世代の神戸離れが深刻だ。
市によると、15~19歳は約5千人の転入超過に対し、25~29歳は約9千人の転出超過。神戸大や甲南大など20以上の大学があり、大学入学に伴い転入が増えているのだが、「地元出身者を含め、大学入学で神戸に来ても、就職で大阪や東京に出ていく」(市担当者)のが現状だ。