「グローバリゼーションを賛美する時ではない」と言われ始めたのは2008年のリーマンショックの頃だった。あの時が潮の変わり目だった。
親しい友人が「これから経済のブロック化がはじめる」と語ったが、同時に「頭の中はユニバーサルであるべきだ」とも強調した。ぼくがローカリゼーションマップという活動をスタートさせたのは、その2年後の2010年である。
少々思い出話に耽ってみよう。
1989年のベルリンの壁崩壊に始まる冷戦の終焉、1990年代のIT革命から、世界は弾けるように一気にボーダーレス化が広まった。今までのバリアがどんどんと崩されていくさまをみて、多くの人はまったく新しい風景が見渡す限りに続くと思い始めた。
外交の専門家に、「これからが実は危ない。小さな紛争が世界各地で起こっていく」とアドバイスをぼくは受けたが、ぼくを含めて周囲の人は、中東や東欧など世界各地にある争いは、限定的な頭痛の種であると見なそうとしたのである。
危険なところにあえて出向かなければ、物理的な妨害を身の回りでは受けない、という認識である。それをひっくり返されたのが2001年のニューヨークのテロ事件であった。
これが無限に広がるかに見えたボーダーレス化の分岐点にあたる。空港のセキュリティーチェックは厳しくなり、搭乗直前にもパスポートを提示するようになった。
一方、そうした後退にぼくは違和感をもちながらも、それらとは関係なく、カーナビなどの電子デバイスのユーザーインターフェースの認知が文化圏によって異なる、という現実から、ローカルとグローバルの狭間を真剣に考えざるをえなくなった。ビジネスのテーマである。
ブロック経済化やローカル重視というトレンドとは違う方向から、ローカルの問題に足をつっこんだ。