2016.9.29 05:00
□知財評論家(元特許庁長官)荒井寿光
北朝鮮は、繰り返し弾道ミサイルの発射実験を行い、9月9日には核弾頭実験に成功したと発表し、世界に衝撃を与えている。
北朝鮮は、このような最先端の軍事技術をどう開発しているのだろうか。国際的な軍事技術動向に詳しい毎日新聞北米総局長の会川晴之氏は著書「核に魅入られた国家」で「北朝鮮の核、ミサイル技術が向上した背景は、…旧ソ連や中国などによる技術支援だけでなく、日本から技術や人材が流出したことにも行き当たる。…濃縮技術についても、北朝鮮は日本の技術を参考にしたと宣伝している」と書いている。
国際原子力機関(IAEA)の情報として、日本のレーザー濃縮技術が日本の特許公報により韓国に流れ、韓国はレーザー濃縮で77%の濃縮に成功したと、毎日新聞は報じている(2015年11月4日)が、北朝鮮も核開発のために、日本の同技術に関する特許公報を参考にしているものとみられている。
皮肉なことに、日本から知らないうちに技術が流出し、それが北朝鮮の軍事技術開発に役立ち、日本への脅威となって跳ね返ってきている。
◆甘い日本の情報管理
日本は一般に、外国に比べ技術情報管理が甘く、大事な技術が近隣諸国に流出し、日本企業の国際競争力を下げてきた。これではいけないと昨年やっと不正競争防止法が改正された。原子力や防衛技術に関しても、普通の技術ほどではないが、論文発表や特許出願が、かなり自由に行われている。