天皇陛下は8日午後3時、象徴の在り方や公務についてのお気持ちをビデオメッセージで表明し、「生前退位」実現への思いを示された。82歳の陛下は体力の衰えを憂慮し、「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と懸念を示す一方、公務の負担軽減には「象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」と否定的な考えを述べられた。
陛下が毎年12月の誕生日会見以外で、お気持ちを示されるのは極めて異例。陛下は、生前に皇太子さまに皇位を譲る「生前退位」の意向を周囲に伝えているが、今回は「天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れること」は控えるとして、退位に直接には言及されなかった。
現行の皇室典範では退位を認めておらず、退位を実現するには制度改正や特別立法が必要になる。陛下は「憲法の下(もと)、天皇は国政に関する権能を有しません」との認識を強調しながら、最後に「国民の理解を得られることを、切に願っています」と国民的な議論の深まりを望まれた。
また、典範には、天皇が重篤な疾患などの理由で職務を果たせない場合に「摂政」を置く規定があるが、陛下は「十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」と違和感を示された。