【シリーズ エネルギーを考える】放射線より避難リスクが心配 (1/7ページ)

2016.5.26 05:00

 □東京大学医学部附属病院 放射線科准教授・中川恵一さん

 ■低線量被ばくでがん増えない

 東日本大震災から5年たっても、日本のエネルギー・環境政策が定まらない。安価な電気を安定供給し、地球温暖化対策を前進させる原子力発電所の再稼働への反対も根強い。日本の将来のエネルギーはどうあるべきか。各界の識者、専門家に聞く。

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 --東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故から5年が過ぎました。インターネットなどでは放射線に関する情報があふれていますが、国民の間で放射線についての正しい理解が進んだとはいえない状況が続いています。まず、放射線がどのように人体に影響を与えるのか、教えてください

 「放射線を浴びると、細胞の核の中にある、細胞をつくる遺伝子を切断し、傷つけてしまいます。しかし、人間の体には放射線が遺伝子を切断しても、それを修復する仕組みがあります。この遺伝子の切断、修復は日常的に起きていることですが、一瞬で高線量の放射線を浴びた場合には修復しきれないことになります。修復しきれずに、傷が残ってしまった細胞は死んでしまうものなのですが、ごくまれに『死なない細胞』になることがあります。これががん細胞です。ただ、がん細胞の発生は放射線を浴びなくても日常的に起きています。高齢になると、1日数千から数万の単位で『死なない細胞』がいろいろな臓器にできて、免疫細胞がそれを抑制しています。がん細胞は遺伝子の経年劣化といえるもので、高齢化が進む日本では2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんでなくなっています。がんを増やす要因の1つが放射線ですが、たばこや野菜不足など放射線以上のがんリスクは日常生活の中にあふれています」

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