特許庁は企業のグローバル経営で知財マネジメント能力の向上や知財戦略人材の養成を支援するため「グローバル知的財産・標準化戦略に関するケース教材」の利用受け付けを始めた。小人数・ゼミ方式の学習に適したテキストを開発し、受講者が基礎知識取得に使える自習用ビデオをウェブ上に用意した。「優れた教材が開発できた。企業や事業者が所内研修などに無償で利用できる。ぜひ活用してもらいたい」(田名部拓也・企画調査課知的財産活用企画調整官)としている。
最大の特徴は、受講者の主対象を企業の経営企画、事業部門などの幹部や担当者にしたことにある。海外のグローバル企業は知財と契約を巧みに活用した経営戦略を取り入れており、地道に研究開発を進め多くの特許や高い技術力を獲得してきた日本企業が市場を奪われ、事業買収をされる例が増えている。しかし日本企業の知財部門は、特許出願や調査では実務能力が洗練されてきた半面、「経営戦略を策定する場での発言力や影響力がいまだに低い」(大手企業知財部長)のが現状で、経営幹部に知財や知財戦略に見識のある人材も少ない。
特許庁は、日本企業がグローバルに活躍するには企業の経営企画部門などで知財マネジメントを理解してもらい、経営戦略に生かす人材が重要だと考えた。この視点は内閣の知財戦略本部でも以前から議論されてきた課題で「知的財産推進計画2016(案)」にも盛り込んだ。