ブラックホールの合体などで放出される「重力波」を観測するため、岐阜県飛騨市の地下に建設された重力波望遠鏡「かぐら」が25日午前、試験運転を開始した。重力波は、アインシュタインが100年前に存在を予言した「時空の揺れ」で、米大学を中心とする実験チーム「LIGO」が2月に初検出を発表したばかり。日本も重力波の観測を通じ、宇宙の成り立ちの解明を目指す。
かぐらの計画はノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章東大宇宙線研究所長が代表を務める。試験運転で装置の性能を確認した後に改良工事を行い、2017年度の本格観測を予定している。
試験運転は午前9時ごろ始まり、地上にあるかぐらの制御室で研究者約10人がモニター画面をチェックするなどしていた。宮川治東大助教は「今後、かぐらをアップグレードして、LIGOに匹敵する観測装置にしたい」と意気込みを話した。梶田所長は「一安心した。一刻も早く国際的な重力波観測ネットワークに参加したい」とのコメントを出した。
かぐらは、一辺3キロのL字形の巨大実験装置。中央部からレーザー光を出して、両端までの距離を精密に計測し続け、重力波がやってきたときに生じる空間のゆがみを検出する。極めて小さい距離の変化を検出する必要があるため、振動の少ない地下200メートルより深いトンネルに設置した。
重力波は、ブラックホールの合体や超新星爆発など重い天体が激しく動いたときに生じる現象。先行するLIGOの望遠鏡だけでは、重力波がどの方向から飛来したか判別できないが、かぐらが本格稼働すれば詳しく調べられるようになる。LIGOより、かぐらが検出を得意とするタイプの重力波もあり、新たな天体現象の発見も期待される。
試験運転は当面31日まで。4月に再び運転した後、感度を数十倍に上げるため、熱によるぶれの少ない鏡に交換するなど改良する。かぐらが建設された神岡鉱山跡ではニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」も運転している。