2016.3.5 05:00
特許庁は28日、都内で「日・シンガポール知的財産シンポジウム 両国特許庁の連携と知的財産制度ユーザーの期待」を開く。両国の外交関係樹立50周年という節目の年に双方の特許庁長官を迎え、両国間および日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)をめぐる知財の活用や連携についての講演や討議を行う。
ASEANは昨年末、ASEAN経済共同体(AEC)を発足。日本企業の生産・開発拠点、消費市場として注目度を増している。半面、事業を裏打ちする知財権の早期獲得や適切な権利行使に向けて先進国並みの基盤整備や人材育成が急務になっている。このためAEC設立の青写真を描く中で知財の項目が設けられ、参加国間で2016年以降10年間の計画策定が進んでいる。日本は、各国特許庁に設備のIT化や人材研修などの支援を続けており、シンガポール特許庁(IPOS)にも上席審査官1人を派遣して審査手法を指導している。
こうした中、今後注目されるのがシンガポールのリーダーシップとわが国の国際戦略の在り方だ。IPOSは3年前、「IPハブマスタープラン」を発表。ASEANでの知財活動の拠点化を志向し、多様な機能の提供を始めている。中でも注目すべきは今後増大する各国特許出願に対応する、ASEAN特許審査協力(ASPEC)の仕組みを使った審査機能だ。ASPECは日本が世界へ普及を目指す特許審査ハイウェイ(PPH)の多国間版である「グローバルPPH」と似た仕組みで、最初に審査した特許庁の審査内容が各国内の審査にも適用される。各国特許庁は同一出願に対する労力を減らせる上、出願を受理した国の特許庁は国際的な重要特許を最初に審査する機会が増え、国際的プレゼンスが高まる。