理研の研究者を中心とした共同研究グループは、ERKがリン酸化によって活性化された後の、細胞質から核へ局在する過程(核移行)に着目した。ライブイメージングや免疫染色を用いてERKの核移行を観察した。その結果、ERKの核移行応答には閾値があり、その前後でスイッチが働いてERKのシグナルがアナログからデジタルに変換されることを発見した。また、核膜孔複合体を構成するタンパク質のヌクレオポリンがERKのデジタルな核移行応答に重要であることも分かった。このメカニズムを利用することで、今後は細胞の運命を人為的に操作するなどの応用が期待できる。
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【プロフィル】新土優樹
しんど・ゆうき 慶應大学環境情報学部、同大学院政策・メディア研究科修士課程を経て、大阪大学大学院生命機能研究科博士課程に在学中。日本学術振興会特別研究員DC1。2012年から理研の研修生として細胞内シグナル伝達の研究を進めている。
■コメント=既存の分野にとらわれず、生物学・医学における広く根本的な問題にチャレンジしたい。
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