パリ同時多発テロではフランスの知財関係者の家族も巻き込まれたというが、日本に住む日本人は今のところまだ、切迫した感覚は持ち合わせていないかもしれない。しかし中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の巡視活動や南シナ海の人工島軍事拠点化には、一抹の不安を覚え、対策の必要性を感じ始めているのではないか。国際社会を生き抜く上で争いはつきものであり、それが現実である。知財の世界も同じことだ。
ある外国人知財ブローカーは「日本の大学や研究機関の特許は“商品”にはならない」と言う。権利侵害されても、まず訴訟を起こさないため損害賠償額が出ない。すなわち値段がつかず、商売にならないからだ。
ではベンチャー企業はどうか。ベンチャーキャピタルの投資資金を訴訟費用には回せない。政府が盛んに海外展開を支援してきた中小企業は「侵害への対処を始めたときは既に手遅れがほとんど」(元政府系機関の相談員)と言う。大手は「外聞を気にして原告になりたがらないし、訴訟費用が1億円を超えるかどうかで決断が鈍る経営者は多い。これでは株主の利益を損なう」(米国人弁護士)と言う。要は“訴訟はしたくないし金もない”のが本音だが、それで済むほど海外での事業や知財活動は甘くない。