TPPにより、知的財産分野では著作者の権利保護が一層強まる。強い関心を集めているのが著作権の保護期間延長だ。映画を除く小説や音楽などの保護期間は現在、「作家の死後50年」だが、米国などの基準に沿って死後70年に延長されることになる。
保護期間の延長は、改正著作権法の成立後になる。昭和40年に亡くなった江戸川乱歩や谷崎潤一郎の著作権は今年末に保護期間が終わるが、それまでに法改正は間に合わないため、インターネット上などで無料で楽しめるようになる。
一方、法整備が進めば、三島由紀夫(45年死去)、川端康成(47年死去)といった作家については、一気に20年保護期間が延長される。
制度改正は作品を守り活用する立場の出版社や、著作権を継承する遺族にはメリットがあるが、著作権が切れた名作を廉価・無料で楽しめるサービスは影響を受ける。保護期間終了後の文学作品をネットで無料公開してきた「青空文庫」は「20年延びることで将来の世界の文化にどれほど資するのか疑問だ」と反対するコメントを発表した。
このほか、TPP交渉の最終盤まで難航したバイオ医薬品の臨床試験データを開発者が独占できる「データ保護期間」の共通化は、実質8年にすることで決着した。日本は現在も8年のため、安価なジェネリック医薬品(後発薬)を入手できる時期に変更はない。