裁判外紛争解決手続き(ADR)機関の一つ、日本知的財産仲裁センターは2016年度中に、企業向けの新業務として「事業に対する特許の貢献度評価」(貢献度評価)業務の新設を検討している。同センターの丸島儀一第5部会部会長の下、昨年6月から弁護士、弁理士らの検討グループによる研究、制度設計が進んでいる。現在、実施規定や関係省庁の公的支援制度との連携などを詰めている段階にある。
同センターは11年度に「事業適合性判定」(適合性判定)業務を開始したが、貢献度評価はこれと対をなす業務として設計される。
適合性判定は、企業が事業を検討する入り口段階で、その事業の強みとなる知財(特許、技術、ブランド、営業秘密、市場など)を持っているか、逆に弱みとなる知財を他社が持っているかなどについて、弁護士、弁理士、調査専門家の3者が協働して客観的に判定する。検討グループの井上一弁理士は「特に弱みを知ることは重要だ。事業開始までに必要な特許・技術の開発や獲得、対外折衝などで弱みを強みに変え、事業リスクを下げることが可能になる。大企業の利用が多い」という。
貢献度評価は、事業を実施する段階で特許の事業への貢献度を評価する。共同研究の成果や複数の企業が所有する知財を事業に活用する場合に個々の特許の貢献度を明確化できる。大学・研究機関の企業に対する不実施補償額や企業内発明者の職務発明対価の算定にも使える。中小企業ならば、大企業と関係する事業で自社の知財の貢献度を知ることによって交渉材料にできる。