2015.8.22 05:00
特許庁は、企業の知的財産部や特許部などで働く知財部員のための「英語知財研修プログラム推進事業」(2015、16年度)を開始した。
狙いは「知財の問題に関して、海外企業の担当者などと直接交渉できる人材養成であり、専門的英会話力の養成は一つのポイント」(事業関係者)という。東京大学の渡部俊也教授を筆頭に研修プログラム開発委員会を立ち上げ、教材開発を進める。教材は実際に研修を実施して検証し、その結果を開発作業へ還元して内容を充実させる。事業終了後は民間企業・団体などへ成果を提供し、民間のノウハウや自主開発などを加え、より完成度の高い教材として普及、定着を図っていく計画だ。
背景には政府の「知的財産人材育成総合戦略」(06年知的財産戦略本部会合)、「知的財産政策ビジョン」(13年閣議決定)などでビジネスのグローバル化に伴い、国際的に通用する知財人材を養成する必要性が指摘されていることが挙げられる。特許庁はかねて「グローバル知財マネジメント人材育成推進事業」(14~16年度)でグローバルな経営戦略を描ける人材育成について検討を進めるほか、特許庁と関係の深い工業所有権情報・研修館で、中小・ベンチャー企業などでのグローバル知財人財育成に役立つ教材開発事業(14~16年度)を進めている。予定通りであれば、16年度末には各研修の検討結果や教材が出そろうことになる。
民間企業でパテントプールの組成やライセンス交渉で活躍後、東京大学大学院などで知財交渉に関するマネジメント実務理論を教えている二又俊文客員研究員は「知財や標準化の国際会議の場には若い日本人の姿が見えなくなり、近隣諸国勢に圧倒されている。英語で交渉や議論ができる人材の養成は喫緊の課題であり、育成には研修に加えて、現場経験を積ませることが非常に重要になる。思い切って現場へ送ることだ」と指摘する。