原子力規制委員会の安全審査に合格した川内1号機(鹿児島県)が7月にも再稼働する見通しとなり、全国の原発にほのかに光明が見えてきた。その一方で、規制委から打ち捨てられている原子力施設がある。日本原燃のウラン濃縮工場(青森県)がそれだ。
日本原燃といえば、六ケ所再処理工場(同)が思い浮かび、原発推進派の中にも使用済み核燃料のリサイクルに異議を唱える人々がいる。しかし、ウラン濃縮はそれとは別の核燃料製造の中核工程で、その国産工場が動かなければ、せっかく再稼働した原発も準国産エネルギーの役割を果たせない。
◆中小企業が支える
「安全審査は4カ月以上中断している。このままでは、日本の原子力のフロントエンド技術は失われてしまう」
原子力関係者は危機感を募らせる。というのも、わが国のウラン濃縮を支えているのは全国数十社の中小企業であり、それらが停滞する安全審査のあおりを受けて倒産の瀬戸際にあるからだ。では、ウラン濃縮とは何か。
核燃料サイクルの一連のプロセスは、原発で核燃料を燃やす発電工程を境にそれ以前をフロントエンド、それ以降をバックエンドと呼ぶ。再処理がバックエンドの要だとすれば、ウラン濃縮はフロントエンドの中核工程と言っていい。ウラン鉱石から製錬・転換された天然6フッ化ウランのウラン濃度は0.7%しかなく、これを原子炉で燃えるように遠心分離機で3~5%へ高める工程である。ウラン濃度が20%を超えると核兵器原料に転用される危険があり、日本原燃にはもちろん、5%以上の濃縮は許されていない。