【一筆多論】木村良一
猛スピードで急降下する機体、何度もドアをたたいて「開けろ」と怒鳴る機長、泣き叫ぶ乗客たち…。まさに地獄絵だ。
3月24日に起きたドイツ旅客機の墜落は、27歳の副操縦士が乗客乗員計149人を道連れに機体を故意に山肌に激突させて自殺した疑いが濃厚になっている。
自殺など操縦士が意図的に起こす事故は想定外といわれ、安全運航上の盲点だ。しかし調べていくと、操縦士の自殺は過去にいくつか起きている。
たとえばシンガポール航空の子会社シルクエアの旅客機(B737)が1997年12月にスマトラ島に墜落して乗客乗員104人全員が死亡した事故は、インドネシア政府の調査の結果、機長が自殺を図った可能性が強い。機長は先物取引で多額の損失を抱えていたうえ、数カ月前に着陸進入のミスを隠そうとしたことがばれて降格させられていた。
99年10月、米東部海岸沖に墜落して乗客乗員217人全員が死亡したエジプト航空機(B767)の墜落では、米運輸安全委員会(NTSB)が「副操縦士が意図的に墜落させた」との最終報告書を公表している。回収されたボイスレコーダーには「神にすべてを委ねる」と話す副操縦士の声が録音されていた。